ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
金色の目がすうっと細められる。
それを見て粟肌が立った。
「どうなんだ!」
怒鳴られた。
破れかぶれで、あたしは何とか声を振り絞った。
「死にたくないです」
「じゃあ、腕を伸ばせ」
間髪入れずに、真っ黒な腕が窓枠から差し入れられた。
汚れていてもそれは普通の人間の腕のように見えた。
黒い固い毛が生えているわけでも、黄緑色の鱗に覆われているわけでもなかった。
金色の目がすごい形相で睨んでいるのが分かり、あたしは言われるがまま長椅子の上に立ち上がり、腕を伸ばした。
「そこ、尖ったガラスに気をつけろ」
泥人間の細やかな気遣いに、しかしあたしは動転していたせいで気が及ばなかった。
そのまま体ごと引き上げられ、何はともあれ脱獄は半分成功した。