その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―


「やった!」

緊張気味にビデオカメラを回していた誠司くんも、無言で見守っていた広沢くんも、乃々香が私たちのほうを振り向いたのに気付いてピースサインを作ってみせる。

乃々香が一番でゴールした瞬間、私も思わず興奮して立ち上がってしまっていた。

立ち上がって頬を高揚させている私を、広沢くんがふり仰ぐ。


「乃々香ちゃん、すごかったですね」

自分の子どもでもないのに、広沢くんが興奮気味にそう言って笑いかけてくる。


「そうね」

感情を抑えた声でそう返したけれど、向けられた笑顔がなぜかとても眩しくて。

直視するのがひどく難しかった。



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