その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




「マンションのエントランスの前まで車回しちゃって大丈夫ですか?」

「ありがとう。すぐ降ろしてもらえば大丈夫よ」

「了解です」

窓の外を流れる景色を眺めながらそう答えたら、広沢くんがちょっと笑うのがその空気で感じられた。

乃々香の運動会を閉会式まで見守った私は今、同じく最後まで一緒にいた広沢くんの車の助手席に乗せられて自宅へと帰ってきていた。

小学校の入り口で電車で帰ると断ったけれど「どうせ同じ方向だから」と強く押し切られて、結局また流されるままに彼の車に乗っている。

こんなふうに何から何までお世話になってしまうのは、絶対に今日限りだ。

もう数メートル先に見え始めた自宅マンションを決意を込めて睨む。

広沢くんは右折して私のマンションの敷地内に車を乗り入れると、エントランスの前に車を止めた。


「はい、到着です。お疲れ様でした」

私を振り向いた広沢くんが笑顔を見せる。

朝からずっと結構な距離を移動し続けてくれたのに、広沢くんは私に疲れの色を少しも見せない。



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