その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
「どうもありがとう。今日は本当に助かった。運動会にも来てくれて、乃々香も喜んでたし。本当に感謝してる。土曜日なのに、ありがとう」
いろいろと予定外な1日だったけれど、広沢くんの存在に助けられたことに変わりはない。
「大丈夫ですよ。気にしないでください。俺は土曜日も碓氷さんと1日一緒にいられて、むしろ役得なんで」
ニヤリと口角を引き上げる広沢くんの言葉が、冗談なのか本気なのかよくわからない。
無言で顔をしかめたら、それを見て広沢くんが可笑しそうにしていた。
「とにかく、ありがとう。朝話した交通費の件だけど、週明けに総務に話してみるから。じゃぁ、お疲れ様」
シートベルトを外して、助手席のドアに手をかける。
そのまま押しあけようとしたら、ロックがかかる音がした。
開かないドアを無駄に数回押して、広沢くんを振り返る。
「ロック……」
エントランスの前でモタモタしていたら、他の住人に迷惑がかかるかもしれない。