その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
眉間を寄せて文句を言おうとしたら、広沢くんが暗がりの車内でもわかるくらい熱っぽい瞳で私をじっと見つめていたからドキリとした。
「何?」
「朝も話しましたけど、俺は別に交通費なんていりませんよ?」
「でも……」
「だから、交通費の代わりに俺とデートしてください」
広沢くんが私を真っ直ぐに見つめながら真顔で言うから、ものすごく動揺した。
「じょ……冗談言わないでよ」
落ち着いていればうまく交わすことなんて造作もないのに、焦りと同様で吃ってしまう。
「冗談じゃなくて本気です。明日の日曜日、何か予定あります?」
「明日は特に何も……って、そういう話じゃなくて」
おまけに、明日の本当のスケジュールが口を滑って出てしまい、全然私らしく対応できない。
「ここに長く車を止められないから、もう降りるわね。じゃぁ、お疲れ様」
早口で誤魔化して手動でロックを開けようとしたら、広沢くんが私の前に乗り出してきて、今外したばかりのシートベルトを手早く付け直した。