その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―


なるほど。

秦野さんくらいの若い子達には、明日の打ち合わせよりも今日の新しい出会いのほうが大事なわけだ。

彼女達の話し声が遠くなるにつれて、だんだん私の気も遠くなっていくような気がした。

体調が悪くなければ、今からでも颯爽と出て行ってひとこと物申したいところだけど。

頭痛のせいで、そんな余裕もない。

またしばらくトイレの個室の中で休息を取ると、気合いを入れて立ち上がった。


溜まっている仕事を早く終わらせて帰ろう。

いつもよりも歩く力が入らない足にぐっと気合いを入れてデスクに戻ると、この前中途採用で入った菅野さんが私の帰りを待ち構えていたように近付いてきた。


「碓氷さん、すみません。ここを少しみていただきたくて……」

彼女が入社してからひとりで進めている仕事の資料を私に見せてくる。

それを確認したあとも、次々と部下達が私へ相談や資料チェック、取引先との進捗報告などにやってきて、秦野さんの資料の修正を行おうとメールを開いたときには、とっくに定時を過ぎていた。



< 83 / 344 >

この作品をシェア

pagetop