その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―


長時間の残業はなるべくしないように社内的に言い渡されているから、定時を過ぎて1時間ほどすると、だんだんと同僚達も仕事を終えて帰宅の準備を始める。

秦野さんから送られてきた資料にもう一度一から目を通し、足りない資料を付け加えて修正したときには、もう企画部内に数人しかいなかった。

さぁ、あとはこれを印刷して、必要枚数コピーを取って、クリップ留めするだけ。

一仕事終えてほっとしたら、忙しさで麻痺していた頭痛が再び襲ってきてくらっとした。


「碓氷さん」

印刷した資料をプリンターまで取りに行こうと立ち上がった私を、誰かが呼び止める。

顔を上げると、数枚の資料を持った広沢くんが立っていた。


「お疲れさま。資料の確認?」

気丈さを保とうとして意識したら、怒っているわけでもないのに眉間がキュッと寄るのが自分でもわかった。


「いえ。これ、碓氷さんが印刷した資料ですよね?自分の分を取りに行ったときにプリンターにあったのを見つけたので」



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