その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
「碓氷さんこそ、人の世話焼いてないで早く帰った方がいいんじゃないですか?今日、体調悪いでしょ?」
低い小さな声で広沢くんに指摘されてドキリとした。
朝から誰にも気付かれなかったのに……
明らかに驚きを顔に出してしまった私を見て、広沢くんが頬を緩める。
「そりゃ、気付きますよ。俺、碓氷さんが思ってる以上にあなたのことちゃんと見てるんで」
まだ残っている数人の同僚達に聞こえないくらいの声でささやいて、広沢くんがにやっと小さく笑う。
怠さで頭の回転が鈍っているのもあって、冷静な顔が保てなかった。
完全に動揺して視線を泳がせてしまった私を見て
、広沢くんがまた、にやりとする。
「とりあえず、2〜3部コピーしときますね」
そう言って意気揚々と歩いていく広沢くんに何も言えなかった。
定時過ぎとはいえ、社内でこんな状況で何を言うかと思えば……
頭が熱くなって、ガンガンと痛くなってくる。