その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
ダメだわ、落ち着かないと。
パソコンの横に置いていたペットボトルの水を取って口に含む。
私は冷たい水で頭を冷やすと、コピー機の前に立つ広沢くんめがけて早足で歩いた。
「予備を含めて6部必要なの」
広沢くんの横に並ぶと、肘で軽く向こうへ押しやる。
「ありがとう。あとは自分でできるから」
広沢くんの方を見ずに無表情でそう言うと、彼がクスリと笑った。
「ほんと、可愛くないですね。碓氷さん」
「言ってるでしょ?あなたに可愛いなんて思われるような年じゃない、って」
小声で返して背の高い広沢くんを睨み上げると、彼が私よりも先にコピーの終わった資料を纏めて取り上げた。
「あとはやっときます。纏めて秦野のデスクに置いとけばいいんでしょう?」
「必要ないわ。もう仕事が終わったなら早く帰りなさい」
広沢くんから資料を取り戻そうと前に回って腕を伸ばすと、彼がさっと身を翻した。