極上御曹司のヘタレな盲愛
「結婚式や披露宴って…単に私たち結婚しましたよって事を、披露する場なんだって思ってたけど…。
本当は、私たちが結婚できるまでにお世話になった人達に、改めて感謝をするための場なのね…。
私、ずっと心の中でありがとう、ありがとうって、みんなにいっぱい言い続けてたよ…」

「ふっ…そうだな…」

大河がタキシードの上着を脱ぎながら、私の顔を見て優しく微笑んだ。

「でも…疲れた〜」

ここは披露宴が行われた水島系列ホテルのスィートルーム。

ソファーに座ってしまったら、もうドレスを脱ぐ気力もないくらい疲労困憊していた。

「大丈夫か?」
「うん、ちょっと休めば平気…」

大河は私の横に座ると手を回し、ドレスの背中のファスナーを引き下げた。

「きゃっ!」
「手伝ってやるよ」

そう言ってドレスをどんどん脱がせていく。
そうして下着姿になった私を抱き上げるとベッドルームまで運び、そっとベッドの上に降ろした。

「少し横になれよ、顔色が悪い。なんなら少し眠れ…」
と言っておでこにキスをした。

「大河は?」
と訊くと、少し困ったような顔をして言う。

「俺は少し仕事をするから…」

今日くらい傍にいてくれないの?って言いそうになるのをグッと堪えた。

「うん。じゃ、ちょっと横になってるよ…」

寝返りを打って、大河に背を向ける。

大河が私の頭を優しくひと撫でしてから部屋を出て行くと、目の縁に溜まっていた涙がポロンと零れ落ちた。

社長である父の姿をずっと見てきた私は、会社を経営するという事がいかに多忙で大変か、よくわかっているつもりだ。

だから水島に戻ってからの大河が、忙し過ぎて私にかまってくれる時間がどんなに無かろうと文句なんて言えない。

でもやっぱり寂しい。
こんな日くらいずっとくっついていたい…。
私、いつからこんなに大河なしではダメになってしまったんだろう…。
大河の事が好き過ぎて怖い…。

でも…こんなに寂しいって思うのは他にも理由があって…私はその理由を大河に言えないでいる…。


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