心、理、初
心の誕生日…
○カフェ心貴呂の休憩時間(十五時~十六時)
心の父「今日の昼食は何にしようか?」
心「ミートスパゲッティ!」
心の父「村津くんと、辺寺くんは?」
初「すいません。私達は用事があって外出するので、今日の昼食は良いです」
心「用事?」
理也「休憩時間内にはちゃんと帰ってきます」
心の父「分かりました」
理也と初は着けていたエプロンを外すと、カウンター席にそれぞれ置く。
理也「行ってきます」
理也が頭を下げる。
初「心ちゃん。後でね」
初が心に手を振る。
心「後でね…」
心が初に手を振り返す。
理也と初が店から出て行った。
心の父「デートかな?」
心「デートでしょ……」
心の父「寂しい?」
心「そりゃ寂しいけど、外でデートしてくれて嬉しい。
久しぶりに良い誕生日だ!」
心の父が悲しそうな顔で心を見ている。

○カフェ心貴呂の閉店後(夜)
理也「店長、新谷、すいません。私達用事があって、すぐ出ないといけないので、今日の片付けをお願いしたいんですけど…」
心「また用事?」
初「明日は私達が片付けるので、お願いします!」
心の父「分かりました。急いでいるんでしょう? 早く行って下さい」
心の父が笑顔で言う。
理也・初「ありがとうございます」
理也と初は、頭を下げる。
理也「俺は先に行く」
理也は初にそう言うと、理也は店を出て行った。
初「店長、心ちゃん。片付けが終わったら、リビングで待ってて下さいね」
心「えっ? 初くん…」
初は急いで店から出て行った。
心「エプロン着けたまま行っちゃったね……」
心の父「それだけ急ぎの用事なんでしょう……」
心の父が片付けを始める。
心(リビングで待っててって…何かあるのかな?)
心の父「心ちゃん。片付けしましょう」
心「はい」
心が片付け始める。

○二階のリビング(夜)
心「帰って来ないね…」
心はスマホで時間を確認すると、21時52分と表示される。
心(辺寺、初くん。いつ帰って来るの?)
心「電話した方が良いかな…」
リビングのふすまが開いて、初と理也がリビングに入ってくる。
初「心ちゃん。誕生日おめでとう!」
初は火がついている大きいロウソク二本と、小さいロウソクがささっている生クリームケーキを持っている。
理也「誕生日おめでとう! 新谷」
初の隣で両手を後ろにして、立っている理也が嬉しそうに言う。
心は真顔で生クリームケーキを見つめている。
心の隣に座る心の父は困惑した顔をして、心を見る。
初が心の側まで来ると両膝をついて、生クリームケーキをテーブルに置く。
初「心ちゃん。火を消して」
心は真顔で生クリームケーキを見つめたまま、火を消そうとしない。
理也「…新谷?」
心の父「心ちゃん……。二人が心ちゃんのために準備してくれたんだよ……。もう…良いじゃないか……」
心「もう良いって…何が? パパはもう…戻ってこないから…良いって事?」
心の父「そうじゃない……」
心「そうじゃないなら…そうじゃないなら……どうしてそんな事言うの?」
心が泣きそうな顔で、心の父を見る。
心の父「心ちゃん……」
心は急に立ち上がると、走ってリビングから出て行く。
初「心ちゃん!」
理也「新谷!」
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