心、理、初
誕生日の約束&秘密の部屋
○二階のリビング(夜)
心の父「申し訳ない……。せっかく準備してくれたのに……」
理也「パパが…原因ですか?」
理也が心の父を見つめる。
心の父「心ちゃんはパパとした約束を破りたくないんだ……」

○(回想)十九年前に心達が住んでいた家(夜)
心のパパ「心ちゃん。毎年誕生日は三人で祝おうね」
心「うん!!」
心が嬉しそうに頷く。
○(回想終了)

心の父「パパが居なくなってからずっと……誕生日を祝わせてくれないんだよ……」
心の父が悲しそうな顔をしている。
初「そうだったんですか……」
理也がテーブルまで来ると、後ろに隠して持っていた白いパックをテーブルに置く。
理也「初。ロウソクの火を消して、ロウソクは取って置いてくれ。
新谷を連れてくる」
初「分かった…」
心の父「辺寺くん……」
理也「店長。時間はかかると思いますが、必ず新谷を連れてきます」

○二階の廊下(夜)
理也は心の部屋の前に来ると、ドアを二回ノックするが、開ける気配はない。
理也「新谷?」
理也が名前を呼ぶが、変化はない。
心の部屋のドアノブを掴んで右に回して開けようとするが、鍵が閉まっていて開かない。
理也「出てくるまで、待つしかないか……」
理也がふと左隣の部屋のドアが目に入り、ドアが少し開いている事に気づく。
理也「あの部屋……」

○(回想)二階の廊下(昼)
理也「なあ、新谷の部屋の隣って何の部屋何だ?」
心「秘密の部屋」
理也「秘密の部屋?」
(回想終了)

○二階の廊下(夜)
理也「いつもあの部屋は鍵が閉まっていたはず……」
理也は秘密の部屋の前まで来ると、ドアノブを掴んで引いて開ける。
理也「新谷……」
理也は何も置かれていない畳の部屋の真ん中で、体育座りで両腕に頭を乗せて泣いている心を見つける。

○二階の秘密の部屋(夜)
理也は秘密の部屋に入り、心の所まで行くと、心の隣に腰を下ろす。
心「うっ…うううう………」
理也は泣いている心を慰めようと、両手で抱き締めようとするが、途中でやるのを止めて、左手を心の背中に置くと、トン、トンと優しくたたく。
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