心、理、初
辺寺の嫉妬
○二階の洗面台(朝)
心が洗面台の鏡を見ながら、髪をブラシでといている。
ドアが開き、初くんが入ってくる。
初「おはよう。心ちゃん」
心「おはよう。初くん。初くんの寝癖いつもよりひどいね」
初の寝癖は色んな方向にとんがっている。
心「直してあげる」
心は自分の持っていたブラシで初の髪の毛をとき始める。
初「ありがとう。心ちゃん」
初はニコニコ笑っている。
理也「何してる……」
ドアが開き、理也が入ってくると言う。
初「理也。おはよう」
心「何って。初くんの寝癖直してあげてるの」
理也「ブラシ貸せ」
心「だから今、初くんの寝癖を直して…」
理也「俺がやるから。ブラシ貸せ!」
心「そう……はい…」
心が手を止めて、持っていたブラシを理也に渡す。
理也「ひどいな……」
理也が初の髪をブラシし始める。
初「理也。ありがとう」
心(ん?)

○カフェ心貴呂のキッチン(昼)
初「三番テーブルの料理は出来ましたか?」
心「出来たよ。待って!」
心が初の近くに行く。
心「初くん、顔にまつ毛がついてる」
初の右目の下にまつ毛がついている。
心「取ってあげるね」
初「ありがとう。心ちゃん」
心がまつ毛を取ろうと右手を伸ばすと、理也の右手に右手首を掴まれる。
理也「俺が取るから、どけ!」
理也に右手首を解放されると、理也の右肩に押されて、心は右の方にずれる。
初「理也、ありがとう」
理也が右手で初の顔についていたまつ毛を取る。
心(んん?)

○二階の廊下(夜)
夕食後、リビングから出てくると、一階から上がってきた理也と初に会う。
心「今日の夕食は何を食べたの?」
私は初の左隣を歩く。
初「今日はサンドイッチだよ」
心「どんなサンドイッチ?」
初「それが…」
初の右隣を歩いていた理也が、心と初の間に無理矢理入って歩く。
初「理也?」
心(んんん?)

○店の近所にある八百屋の前(十五時~十六時)
店の食材の買い出しに八百屋で食材を選んでいる心。
八百屋の男性店員「あの、今週の日曜、暇ですか?」
心をじっと見ている体育会系の男性店員。
心「私に言ってるんですか?」
八百屋の男性店員「はい。暇なら、俺とデートして下さい」
心(デート! あっ…でも…)
心「すいません。日曜は仕事で…」
八百屋の男性店員「じゃあ、暇な日はいつですか?」
心「えっと…」
理也「教えられません。彼氏居るんで…」
心の背後に居た理也が答える。
心「えっ?」
理也は心の右手に理也の左手を重ねて、恋人つなぎにすると、心の手を引いて理也が歩き出す。

○街中(十五時~十六時)
心「辺寺。私、彼氏居ない」
理也「俺が彼氏って事になってるだろ…」
心「それは店の中の話で……。八百屋で食材買わないと…」
理也「スーパーでも買えるだろ……」
心「八百屋の方が安いの。戻ろう…」
理也「嫌だ……」
心「辺寺……」
心(買わないと……)
心は理也に繋がれている手を振りほどく。
心「辺寺! 私に嫉妬してるんだよね? だから、私が初くんの側に居ると、邪魔するんでしょ? 食材の買い出しだって、最近までは初くんと一緒に行かしてたくせに今日来たのは、私が初くんの側に居るのが嫌だからなんでしょ?」
理也「嫌だよ……」
心「うん。私に怒ってるんだよね? でも、だからって。食材を買うのを邪魔したり、私の出会いを無くすのは、ひどいんじゃ」
理也「嫌なんだよ!! 他の男が側に居るのが……嫌なんだよ……」

○カフェ心貴呂のキッチン(十五時~十六時)
初が流し台で、汚れている皿を洗い、その洗った皿を隣に居る心の父が、白い布巾で皿を拭く。
心の父「辺寺くんが食材の買い出しを申し出るとは、意外だったな…」
初「そうですか? 私は行きたがると思ってましたけど」
心の父「初くん」
初「はい」
心の父「辺寺くんは、村津くんに恋してないよね?」
初の皿を洗う手が止まる。
心の父「辺寺くんは、心ちゃんに恋してるよね?」
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