心、理、初
辺寺は初くんの恋人、だけど…
○二階の心の部屋(夜)
心がベットの上で大の字になっている。
心(辺寺は初くんの恋人。辺寺は初くんの事が好き。辺寺は初くんの事が大好き)
コン、コンと二回ドアのノック音がして、心はベットから起き上がり、立つと、ドアまで行き、ドアを開ける。
心の父「心ちゃん」
心の父が満面の笑みで立っていた。
心の父「中に入って良いかな?」
心「うん。良いよ」
心が心の父を心の部屋に入れる。
心「お父さんが部屋に来るなんて珍しいね」
心の父はベットの側にあるオレンジのバランスボールに座る。
心はベットに座る。
心の父「心ちゃんと二人きりで話したくて」
心「なら、夕食の時に話せば良かったのに」
心(二人きりだったじゃん)
心の父「リビングだと話してる時に、辺寺くんに聞かれる可能性もあるからね」
心「辺寺に聞かれたら困る話なの?」
心の父「そうだね。辺寺くんの話だから」

○二階の廊下(夜)
外で夕食を食べて帰ってきた理也と初が廊下を歩いている。
初が初の部屋の前で足を止める。
初「じゃあね」
初が理也に向かってにこやかに笑う。
理也「初」
初「ん?」
理也「話がある」

○二階の心の部屋(夜)
心「辺寺の話?」
心の父「うん。心ちゃん…。辺寺くんは心ちゃんに何か変な事を言ってない? 何か変な事をしてない?」
心「変な…事?」
心の父「それで……辺寺くんの事を勘違いしてない?」
心「勘違い? 何それ…」
心の父が真面目な顔で、心を見つめる。
心の父「お父さん…。もし、辺寺が私に何か変な事を言ったり、したとしても。私は辺寺の事を勘違いしたりしないよ。からかわれてると思うだけ」
心の父「そう……。なら、良い……」
心(からかわれてるって、思いたいから……)

○二階の廊下(夜)
心「おやすみ。お父さん」
心の父「おやすみ。心ちゃん」
初くんの部屋のドアが開き、心が見ると、中から理也が出てくる。
理也「じゃあな」
初くんの部屋のドアをが閉まる。
理也が理也の部屋に向かって歩き出すと、心と心の父に気付く。
理也「お疲れ様です」
理也が心の父に向かって頭を下げる。
心の父「お疲れ様」
理也は頭を上げると、心を見る。
理也「お疲れ様」
心「お疲れ様」
心は笑顔で言う。
心(辺寺は初くんの恋人)

○二階のベランダ(夜)
木の手すりにもたれかかって、ベランダに座っている心。
心は目を閉じると、再び目を開ける。
心「何で目を閉じると、辺寺の顔が浮かぶのよ!」
心(気になって、寝れないじゃん!!)
心「辺寺のバカ……」
心(私のバカ……)
理也「おい。こんな所で何やってんだよ」
心「辺寺……」
声がして、心が見上げると、理也が立っていた。
心「辺寺こそ、何しにここに来たのよ!」
理也「俺はベランダの窓を閉めに来たんだよ!。そしたら声が聞こえたから…」
心「聞こえたの?」
理也「ああ。何言ってるかは分からなかったけど…」
心「そう……」
心(良かった……)
理也「新谷と店長って…仲良いよな」
心「そりゃそうでしょ。親子なんだし」
理也「俺は親父と仲悪いけど」
理也は木の手すりにもたれかかって立つ。
理也「まあ、俺達は血は繋がってないけどね」
心「仲の良い、悪いに。血の繋がりは関係ないよ」
理也「新谷はパパと仲が良かったんだもんな」
心「仲が良かったね……。お父さんよりも……。十二歳までお風呂一緒に入ってたし」
理也「毎日じゃ……ないだろ?」
心「毎日だよ。辺寺は…」
理也「ない! 一回も一緒に入った事ない!!」
心「一回も? 温泉行った時に、“一緒に入ろう!”とかなかったの?」
理也「ないよ…。親父は厳しくて、近寄りがたい人だから」
心「へぇ……。お母さんはどんな人なの?」
理也「母親は…」
心(もう少し…もう少しだけ……。二人で居させて……)

○カフェ心貴呂の店内(朝)
初は開店準備をしている。
店のドアが開き、一人の和装の男性が店に入ってきた。
初「申し訳ありません。まだ、店は開いてないのですが」
初は和装の男性に気付くと、椅子を並べていた手を止め、言いに行く。
理也の父「大丈夫です。人に会いに来たので」
心「ほら、早く!」
理也「分かってるよ! 押すな!」
心が理也を押しながら、階段から降りてくる。
理也の父「理也」
理也は名前を呼ばれて、和装の男性を見る。
理也「親父……」
初「理也の…お父さん?」
理也の隣に居た心が驚いた顔をする。
心「パパ……」
理也「パパって……」
初「心ちゃんの…パパ?」
理也の父「大きくなった。心」
トイレから出てきた心の父が和装の男性に気付く。
心の父「貴葉(きは)……」
理也の父「久しぶりだな。次呂(じろ)」
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