心、理、初
心のパパは辺寺の父親
○二階のリビング(朝)
心の父の向かいにテーブルを挟んで理也の父が座り、その隣に理也が座っている。
心の父「和服店のお嬢様と結婚したとは聞いてたけど、その人に子供が居て、それが辺寺くんだったとはね……」
理也の父「私も理也が次呂と心の店に居ると知った時は驚いたよ。こんな偶然があるんだと」
心の父「辺寺くんも驚いたよね」
理也「はい……」
心「パパ!!」
心はいちごミルクが入ったコップを乗せたおぼんを持って、理也の父の側に行くと、テーブルに置く。
心「いちごミルクだよ。パパが好きな」
笑顔の心。
理也の父「そうだったね……」
心「飲んで。パパ!」
理也の父「……話をしても良いかな?」
心「話?」
心の父「何?」
理也の父「理也は今月で店を辞める」
理也「はっ?」
心「えっ……」
理也の父「経営の勉強をさせるんだ。理也は店を継ぐからね」
理也が立つ。
理也「店は継がないって言っただろ!!」
理也の父「……そういう事だから、頼んだよ、次呂」
理也の父が立つ。
心の父「貴葉……」
心が立つ。
心「パパ。店に辺寺が必要なの…」
理也の父「理也は私の店に絶対必要なんだ」
心「でも…辺寺は店を継ぎたくないって……」
理也の父「理也は継がないといけないんだ」
心「パパ……。どうしちゃったの? 私が知ってるパパは優しくて……」
理也の父「心」
心「どうして“心ちゃん”って、呼んでくれないの?」
理也「新谷…」
理也の父「心……。会わなくなって十四年も経ってるんだ。昔の私はいちごミルクが好きだった。でも、今は好きじゃない。もう…心が知ってる私じゃないんだ……」
心「パパ…」
理也の父「心。私はもう心のパパじゃない。私は理也の父親なんだ」
理也「親父! そんな言い方…」
理也の父「来月に迎えに来る」
理也「親父……。待てよ! 親父!!」
理也の父がリビングから出ていき、理也が追いかけて、リビングから出る。
心の父が立つ。
心の父「心ちゃん……」
心「お父さん、いちごミルク飲んで。コップ洗って、早く開店準備しに行かないと。初くん一人じゃ大変だよ!」
心が無理して笑う。
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