ことほぎのきみへ
「ひさとさん、ついてきてもらえますか?」

「ここで食べれるんじゃないの?」

「はい。だけど
少し騒がしいですし、移動しましょう」


食べ歩きできる体で売ってはいるけど
子供やお年寄りがちゃんと座って落ち着いて
食べられるようにスペースを用意してる


人が引いたって言っても
教室内も廊下も騒がしいし
ひさとさんもきっと内心嫌だろう


「こっちです」




ひさとさんを連れてやってきたのは
3階の生徒、生徒の関係者専用の休憩所

その休憩所はいくつかあるけど
イベントが始まってるからかどこも空いてる


「あ、こっち人いないので
こっちで食べましょう」

「うん」




……




「どうですか?」

「うん、美味しい」

「良かった」


ひさとさんの返事にほっとしながら
私も亜季が差し入れで
持ってきてくれたたこ焼きを頬張る


「文化祭、かなり盛り上がってるね」

「うち、毎年こんな感じみたいです」

「そう」


言いながらひさとさんは
おもむろに私の口許に手を伸ばしてきて

ひさとさんの指が
唇に触れてびくりと肩をあげる


「っ?!」

「ソースついてる」

「……っあ、ありがとうございます……」


……びっくりしたのと、恥ずかしいので

かぁ~っと顔が熱くなる


「………。
……ごめん、またやった」


そんな私を見てひさとさんはまた
しまったと焦るような表情を見せた


「……気を抜くとすぐに手が出る」
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