ことほぎのきみへ
優は一樹のことを実の兄のように慕っている

スポーツ全般が得意で
勉強もできて、面倒見のいい一樹

初めて会った時から
一樹は優に良くしてくれた

とても優しくしてくれた

一緒に遊んだり
勉強を見てあげてくれたり
悩み相談に乗ってあげてくれたり


優が一樹に懐くのに時間はかからなかった


「いいよ。行っておいで」

「!ありがとう」


笑いかけると
優は、ぱっと嬉しそうな表情を見せて


「花菜、いろは姉困らせるなよ
後で迎えに行くから」

「はぁい」


花菜に言い聞かせると
ひさとさんに軽く頭を下げて
そのまま駆け足で教室から出ていった


「お姉ちゃん、花菜
お店見てまわりたい」

「うん、いいよ」

「お兄ちゃんも一緒に行こ」


お菓子をもらって上機嫌
すっかり警戒の解けた花菜は
くいっとひさとさんの服をつかんで言う


「花菜、ひさとさんは―」

「いいよ」


この人混み

歩くのも大変な場所も多いし
喧騒の中に長時間いたくないだろう

そう思って花菜にだめだよと
断りの言葉を向けようとしたけど
それより早く、ひさとさんが頷いて

私は面食らう


「やったぁ~っ」

「……いいんですか?」

「うん」


飛び跳ね喜ぶ花菜

私はそんな花菜を眺めて、ひさとさんを見上げる

ひさとさんはこくりと頷いた
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