ことほぎのきみへ
「ねぇねぇ、はやくはやく」


早く行きたくてしょうがない様子の花菜
私とひさとさんの手を取って
ぐいぐいと引っ張る


「ほら、行こう」

「……は、はい」



……



「わぁ~っ
おいしそ~っきれ~っ」


見るものすべてに目を輝かせて
興味津々で食い付く花菜


「ねーねー、ひさとお兄ちゃん
見て見て~」

「うん。きれいだね」

「……すみません、さっきから何度も」


よっぽどひさとさんの事が気に入ったんだろう

事あるごとに
花菜はひさとさんに見て見て聞いて聞いてと
詰め寄って


「元気だね。いろはの妹」

「……あの
ひさとさん小さい子とか苦手じゃないですか?
うるさかったら注意するので言ってください」


人嫌いで騒がしいのが苦手なのに

何にでも興味を持って騒ぐ
花菜みたいな子供はまさにその地雷を踏む


「そうだね。苦手」


案の定ひさとさんは頷く


「なら……」

「でも、あの子は平気だよ
嫌な感じしない
見た目や雰囲気がいろはに似てるから」

「そうですか。……………。」


……。


ほっとした後

ん?と

そのひさとさんの言葉に首を傾げる



…………………………私に、似てるから平気?


……
……
…………それって……



「?お姉ちゃん、なんで赤くなってるの?」

「…へっ?え、あ、な、なんでもないっ
ちょっと、あつくて……」

「人いっぱいだもんね~」
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