ことほぎのきみへ
花菜のそんな指摘に私は慌てて取り繕う

検討違いの解釈にほっとしながら
まだ熱いほっぺたを手で押さえる


「あ。あのね、これねー……」

「うん」


……。

花菜に引っ張られて
お店に連れていかれた
ひさとさんを後ろからじっと見つめる


『ひさと、いろはちゃんは平気みたいだし』

『いろはちゃんといる時はすごく落ち着いてる』


…………矢那さんに、前に言われた言葉


疑ってたわけじゃない
けど、やっぱり実感は湧かなかったから


でも


『いろはに似てるから平気』


実際にそれを本人の口から言われると
急に、それが現実味を帯びてきて


………………浮かれてしまう


ひさとさんにとって自分は
傍にいて落ち着ける存在なんだって
私はそういう存在になれてたんだって


すごく


すごく嬉しくて


この人の心を穏やかにできるような
癒せるような存在になりたいって思ってたから


「いろは」

「お姉ちゃん」


揃って私を呼ぶふたり


なんだか幸せな気持ちになりながら
私はふたりのもとへ向かった
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