私のかみさま
それから


数ヵ月の闘病の末



おじいちゃんは亡くなった




ぴーーーっと鳴り響くうるさい音



泣き崩れるお母さん


辛そうに目を伏せるお父さん



握っていた手が、するりと力なく落ちていって


呼びかけても、何の反応も返ってこなくて



その瞬間




―ぷつりと




自分の中で、何かが切れるような音がした






『……心因性記憶障害?』



『ええ、娘さんにとって
おじいさんの存在は
とても大きなものだったのでしょう』


『心を守るために、体がとった防衛反応
と言えば、分かりやすいでしょうか』



何故か、連れてこられた病院


不安そうな顔のお父さんとお母さん


私はぼんやりしながら、その会話を聞いていた



『この子は、大丈夫なんですか
……父との記憶は、一生戻らないんですか』


『日常生活を送る分には何の問題もありません
ですが、おじいさんとの記憶に関しては
なんとも…』


『きっかけや引き金になる出来事があれば
記憶を取り戻す可能性もありますが』


『防衛反応として起こっていることですので
『思い出す事』を拒絶する方が強いかと』


『一生その記憶を
封じ込めたままの可能性もあります』
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