家族
本城玲音


本城玲音は父親が大好きだった

それと同時に大嫌いだった

何故なら‥‥時々父は‥‥遠くを見るのだ

皆でいても‥‥

小さな女の子が歩いているのを見ると‥‥

懐かしむみたいに‥‥遠くを見るのだ

家族には解らないだろうと想っているが‥‥

玲音にはそれが堪らなく嫌で仕方がなかった

父親に愛されてない‥‥とは謂わない

「父さん、オレ大きくなったらサッカー選手になる!」

そう言うと決まって父は嬉しそうに笑って

「玲音ならなれるさ!」と言ってくれた

授業参観に来てくれなくとも

サッカーの試合観戦に来てくれなくとも

玲音は父が好きだったし

仕事だから仕方ない‥‥と想っていた






あの日までは‥‥‥



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