家族


この関係を続ければ‥‥

悲しむ家庭がある事を解っていて‥‥

それでも悟史を愛していたから続けてしまった

この砂糖菓子の様な甘い生活が一生続くなんて想っていなかった

想っていなかったが‥‥

自分から離れる事なんて‥‥出来なかった

甘えていたのだ

奥さんと張り合うつもりなんて一切なかった

系列の会社にいれば嫌でも耳に入る

本城さんの奥さんは美人でバリバリ仕事が出来る、社内に止まらず支店にまで人気のあるマドンナだった‥‥と。

それに比べて自分は?

地味で、真面目ちゃんと皆に謂われるだけの、何の取り柄もない人間だ

敷かれたレールからはみ出す事なく地味に生きてきた

この先もそうやって生きていくのかもと思っていた

何の変哲もない日常

変化のない世界



ただ一度‥‥他の人と違う変化が自分に訪れた

差し出された手を当たり前の様に取ってしまった

それが罪だと解っていても‥‥

これは己のエゴだと‥‥

私の罪だと‥‥

自分を責める気持ちと‥‥

自分に変化をもたらしてくれた悟史の傍にいたいと想う気持ちと‥‥

常にせめぎあっていた

だから自分に課したのだ

決して結婚を望んではいけないと‥‥



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