家族
結婚さえ望まなければ‥‥
悟史の傍にいられる
何でそんな愚かな事を考えたのだろう‥‥
何で‥‥そんな事で許されると想ったのだろう
自分は確実に一つの家庭を壊したのだ
罪は自分に‥‥
悟史との関係を選んだ日から決めていた
だから敢えて娘の為に亜依は口を開いた
「あなた、結婚してくれると謂うならば真依が小学校に入学する前に‥‥して欲しかったです
真依ももうじき中学に入ります
今の生活が歪だと気付く年頃です‥‥
真依は昔‥‥私に言いました
何故、お父さんは帰って行っちゃうの?
何故、お父さんと私達と苗字が違うの?
って‥‥あなたは真依の事も見てなかったのです
あなたは誰も見ていなかった
一体誰を見て、誰と生活していたのですか?
奥さんやお子さんが離婚と謂う決断を下す‥‥
それがどんな想いの上に成り立っているか?
あなたは‥‥ご存知なのですか?」
悟史は言葉もなかった
大人しい女性だった
悟史に逆らわない様な大人しい女性だった
不平不満も一度も口に出した事もない
真依が風邪を拗らせて入院した時だって、直ぐに駆けつけられなくて‥‥
あれ‥‥俺は玲音が怪我して入院した時も駆け付けて逝かなかった
亜沙美が入院した時も‥‥
自分の中で境界線を引いて、その境界線の中を行き来している間に‥‥
自分自身を雁字搦めにして‥‥
彼女達の想いの上に胡座を掻いてしまっていたのだ‥‥
動かない夫
動かない彼氏
彼女らはそんな男に三くだり半を突き付けたのだ
それが現実だった