家族
悟史は亜依に深々と頭を下げた
「本当にすまなかった
お前達にも我慢ばかりさせて本当にすまなかった」
「いいえ‥‥私もあなたの奥さんの想いの上に胡座を掻いて甘えていたのですから同罪です‥‥
いえ、私の方が罪は深いかも知れません
あなたの家庭を‥‥壊させたのですから‥‥」
「亜依‥‥」
「あなたの奥さんに‥‥一度だけ逢わせてくれませんか?」
「逢ってどうする?
逢っても何も解決なんてしない」
「もう離婚届に判を押されたのでしょ?
ならば離婚は成立してますね
ならば、元奥さんに逢わせて下さい」
決意の瞳に‥‥悟史は逃げる道を封鎖された
悟史は亜沙美に携帯から電話を入れた
ワンコールで亜沙美は電話に出た
昔からそうだ
この人は何もかもが素早い動作で動いているのだ
「亜沙美か?」
『私の携帯に電話したのなら亜沙美なんじゃないの?』
交際中に聞いた台詞だった
結婚してからはLINEでの送信ばかりで、そんな事さえ忘れていた