家族


「お前に頼みがある‥‥聞いてくれないか?」

悟史は恐る恐る切り出した

「良いわよ、玲音の最後の我が儘を聞いて下さったあなたですから‥‥
最後に一度だけ聞いてあげても良いわよ」

「坂本亜依と言う女性を知っているか?」

「知らない」

「‥‥俺の‥‥交際相手だ」

「あらそう。」

「彼女が‥‥お前と逢いたいと言ってる‥‥
逢ってやってくれないか?
それが俺の最後の頼みだ‥‥頼む‥‥本人のたっての希望なんだ」

「良いわよ。」

あっさりと返されて悟史は狐に摘ままれた想いで

「良いのか?」と返した

「良いわよ、それがあなたの最後の頼みなら、聞いてあげる」

「ありがとう‥‥」

「で、何時逢うの?」

「え?‥‥」

「だから、何時なの!
こっちも予定があるからね!
今引っ越しの荷造りで動けないから予定を決めて頂戴」

「これから‥‥行っても良いか?」

想いは断ち切らねばならない

総てを終わらせるなら早い方が良い

それが‥‥未来へ向かう者達の『答え』ならば尚更だ


< 31 / 53 >

この作品をシェア

pagetop