家族
「お前に頼みがある‥‥聞いてくれないか?」
悟史は恐る恐る切り出した
「良いわよ、玲音の最後の我が儘を聞いて下さったあなたですから‥‥
最後に一度だけ聞いてあげても良いわよ」
「坂本亜依と言う女性を知っているか?」
「知らない」
「‥‥俺の‥‥交際相手だ」
「あらそう。」
「彼女が‥‥お前と逢いたいと言ってる‥‥
逢ってやってくれないか?
それが俺の最後の頼みだ‥‥頼む‥‥本人のたっての希望なんだ」
「良いわよ。」
あっさりと返されて悟史は狐に摘ままれた想いで
「良いのか?」と返した
「良いわよ、それがあなたの最後の頼みなら、聞いてあげる」
「ありがとう‥‥」
「で、何時逢うの?」
「え?‥‥」
「だから、何時なの!
こっちも予定があるからね!
今引っ越しの荷造りで動けないから予定を決めて頂戴」
「これから‥‥行っても良いか?」
想いは断ち切らねばならない
総てを終わらせるなら早い方が良い
それが‥‥未来へ向かう者達の『答え』ならば尚更だ