空に向かって
「これからすぐにでも入院して下さい。早めの治療が必要です。その治療に当たってなんですが、抗がん剤治療が効果的なんですが副作用などがあり、拒まれる方もいらっしゃいます。はやり一度親御さんと一緒に来て頂きたいのですが…今から連絡して頂けますか?こちらからご説明致しますので」
難しい話に耳を傾けることも出来ずに、心ここに在らずという感じで腑抜けた返事をする。
「…父に連絡してみます」
今の私の保護者はお父さんしかいない。
家にいない時間の方が長いし、単身赴任したっきりだけど…
診察室を出てお父さんに電話をかける。
ープルルルル
ープルル
ツーコールで出た父。
『はい』
懐かしい父の声。