【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 オルセー美術館を出て再びメトロに乗り、マレ地区へ戻ってきた。

 時刻は十二時三十分近い。

 お腹空いた……。

 オルセー美術館のレストランは美味しいのに、うっかり出てきちゃった。

 あの男性のことは考えないようにして地元のレストランに入ると、顔見知りのウエイトレスが近づいてくる。

 彼女の名前はクレア。年は三十代前半で、ブラウンの髪を顎で揃えたボブスタイル。綺麗な彼女はこの店のシェフが恋人だ。

 オーリィ家が頻繁に食事するレストランなので、スタッフ全員と顔見知りである。

「ハル、いらっしゃい。あの席に座って」

 クレアは空いている席を指さして、忙しそうに厨房の中へ入っていく。

 私は奥へ進み、ふたり掛けの席に腰を下ろして帽子を取った。

 このレストランはガレットが絶品。地元でも人気店で、観光ガイドなどにも出てくる。

 ブルーの窓枠に赤いひさしのおしゃれな店構え。店の前にもテーブルがあり、テラス席になっている。

 こういった気持ちのいい天気の日は外の席に座って、通りを歩く人々を眺めるのも楽しいが、今日はひとりだから店内で食事をすることにした。


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