【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「うん。わかった。仕事頑張ってね」

 そのとき、電話の向こうで《シャンパンはいかがですか?》と、女性の声が聞こえた。聞き覚えのあるその声は、辻野さんみたいだ。

 シャンパン……。

《料理は帰ってからいただく。心春は待たずに先に食べているんだよ》

「……先に……うん。美味しくできたから、柊吾さん食べてね」

 柊吾さんはもう一度謝ってから通話を切った。

 スマホをテーブルの上に置いて、ガクッとうなだれる。

 会社勤めをしたことがない私には柊吾さんの世界はわからない。事情があるのだろうし、柊吾さんは連絡をしてくれたのだから、理解のある奥さんにならなきゃ。

 待たずに先に食べてと言うからには、帰宅が遅くなるに違いない。

「うん! 食べよう!」

 私は大きく頷いて、ソファから元気よく立ち上がった。


 柊吾さんは二十四時になる前に帰宅した。

「お帰りなさいっ」

 リビングのラグの上から立ち上がる。

「ただいま。夕食ひとりにさせてすまなかった。勉強していたのか」

 柊吾さんは黒のロングコートを脱いでから、私を抱きしめて額にキスを落とす。

 外気をまとった柊吾さんの身体は冷たい。もこもこした素材のルームウエアを着ていた私にもそれが伝わってきた。

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