【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「柊吾さんがよくても私が嫌なのっ。じゃあ、作るからね」

 彼はおかしそうに笑みを漏らし、書斎へ入っていった。

 書斎のドアがパタンと閉まるのを見て、肩から力が抜けて重いため息が出る。

 柊吾さんは優しい。彼の態度だけ見ていれば、正巳さんの言葉は嘘だと思える。

 だけど、私が柊吾さんが電話で『愛し合っているじゃないか』と言っていたのを聞いている。辻野さんと空港で親しげにしていた姿も見ている。

 嘘だと思いたいけど、そうは思えなくて、私の心は揺れていた。


 柊吾さんにはなにも聞けないまま年が明けた。

 もし正巳さんの話が本当だとして、それを柊吾さんの口から聞いてしまったらこの生活が壊れる。

 柊吾のことを愛しているからこそ、真実を知りたくなかった。愛しているのは私だけだと思わせてくれる彼と、このまま平穏に過ごしていきたい。

 知らないふりなんて私らしくないけれど、今の関係は絶対に壊したくない。

 それほど柊吾さんを愛していた。

 そしてお義母さまの言う通り、私は大学受験を諦めた。

 これは自分自身が出した決断。子供を産んでからでも大学へは行ける。

 ただ大学を今諦めることを柊吾さんには伝えていない。彼なら子供は大学を卒業してからでも問題ないと言うに違いないから。

 大学の試験は受けに行ったが、回答は白紙だったり、適当に書いたりした。もちろん落ちるために。

 お義母さまに言われたから受験をやめたと知ったら彼は怒るだろう。

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