拾ったワンコが王子を連れて来た

生田さんに連れて来られたではなく、私の意思で生田さんについて来た?って…事?
そんな事ある訳ない!
絶対に!

「稀一郎の車に乗ったのは、君の意志じゃなかったのかな?」

えっ?
それは、私が訴えても無駄だと暗に言ってるの?
生田さんを守る為に…?
まぁそれも仕方ない事よね…?
ゼネラルマネージャーにとって、生田さんはジビネス上でも、プライベートでも大切な存在だものね?
守って当然だわ…

やっぱり、どこの企業も同じなんだ…
あまりの悔しさに、体の奥から何かが込み上げてくるのがわかる。

泣くな!
最後のプライドだけは守りたい。

歯を食いしばり、込み上げて来るものを必死に堪えていた。

「誤解しないで欲しい。君の事も、稀一郎と同じくらい大切な社員だと私は思ってる。
ただ、私が言いたいのは、君は自分の気持ちに、気付いていないだけじゃ無いかと思ってね?」

「何が仰りたいのでしょう?」

「この部屋に上がってくるまでの間、ずっとその手は繋いでいたんじゃ無いかな?」

「それは…」

「稀一郎が離さなかった?」

ええ。そう。
私が離そうとしても、彼は離してくれなかった。

「本当に嫌なら、セクハラだと周りに居た社員に訴えればよかった。この部屋に入って来た時にも、私達に訴えればよかったんじゃ無いかな?」

「それは…」

「君が以前働いて居た◯△ホテルで、理不尽な対応をされた事は、調べさせてもらって知ってる。
だから、もし君が稀一郎にセクハラを受けてると訴えたなら、稀一郎をクビにする約束になっていた。
それも稀一郎からの申し出だがね?」

え?
じゃ、これは…

「稀一郎には、それだけの覚悟があったんだよ」

生田さん…

生田さんは苦笑して、絶対、私からホテルの仕事を取り上げたりしないと言った。

この人は…なんで…そこまで言えるの?
私なんかの為に…

「今日、この場に私の母を同席させたのは、この書類に署名して欲しいと、稀一郎に頼まれていたからなんだよ?」

ゼネラルマネージャーがそう言って出したものは、婚姻届の用紙だった。
それも、生田さんは既に記入済みで、証人欄にはゼネラルマネージャーと、奥様のサインもあった。





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