拾ったワンコが王子を連れて来た

ゼネラルマネージャーから謝罪を受け、応接室を出ようとした時、ゼネラルマネージャーから思いもよらない言葉が寄せられた。

「そう言えば、ワンコロは元気か?」

ワンコロ…?

「あれ、なんて言う犬種だったけ…?
スピッツに似た…えーと…」と考える様に言うゼネラルマネージャー。

「…サモエド…?」

「そうそう。サモエドだ!」

まさか…

「おい、バカ! ワンコロの事はナイショだって…」
ゼネラルマネージャーの言葉に、慌てる様に出た生田さんの言葉。

嘘っ…
あのワンちゃんが…生田さんの…飼い犬?
じゃ、あの雨の日の事は全て…生田さんの…

「真美、これには色々訳があって…」

「ええ。その様ですね?」

「真美、話を聞いてくれ? 頼む」

「ええ。帰ったら、詳しくお聞きします! 居ない筈のご家族の事も含めて!」

お騒がせしましたと、一礼して、生田さんを引きずる様に、その場を後にした。

ドアの閉まる間際に、私達、いや、生田さんの背中に “ 頑張れ! ” とゼネラルマネージャーは励ましの声を掛けていた。

地下駐車場へ駐めてある、生田さんの車に乗り込むと、生田さんは両手を合わせて “ ごめん ” と、謝った。

「あんな小芝居までしてホント馬鹿!」

「ごめん。ホントごめん。だってああでもしないと、真美は俺の事見てくれないし、チャンスもくれないじゃん?」口を尖らせる生田さんに呆れてしまう。

じゃんって…
あなたいくつですか?
仕事の時は、いつも凛とした姿で、みんなから尊敬されてるのに…

「わかりました!許してあげる代わりに、今夜は美味しいご飯作ってくださいね!」

「うんうん。何が良い?
真美の好きなビーフストロガノフにする?」

「え? 私がビーフストロガノフが好きって知ってたんですか?」

「勿論! 真美の事なら、なんでも知ってるよ?
辛い物が苦手で、寿司はワサビなし!
鯖寿司は好きだけど、何故か鯖の煮た物は嫌い。それから、酢豚にパイナップルは許せない! それと、メロンに生ハムもダメだろ?」

どうして…

「食堂だろうとどこであろうと、いつも真美を見てたからな?
一つ間違ったらストーカーだけどな?」と生田さんは笑う。

それ十分ストーカーです!
でも…そこまで想われて嫌な気がしないのは何故だろう…
手を繋いでいた時と言い…
ゼネラルマネージャーが言っていた様に、私はもう既に…




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