エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

「白坂くん。また女性社員を振ったって聞いたんだけど……しかも、ひどく」

新入社員の白坂祥司は、アイドル系の美形だ。くっきりとした二重のベビーフェイスは甘さたっぷりで、〝実はおかしな魔法をかけられて童話のなかから飛び出してきたんです〟と真面目な顔で言われたら納得してしまうほどきれいな顔立ちをしている。

それだけでも社内の女性人気を集めること必須だというのに、白坂くんには、社長の甥っ子というすごいおまけがもうひとつ乗っている。

本来なら、社長と血縁関係にあることは内緒にしておきたかったらしいけれど、この事実を知らない人は、社内にはほぼいない。
白坂くんが入社してくる数週間前には噂になっていた。

どこから広まったかは謎だけれど、その手の噂が社内に広がるのはインフルエンザ菌が蔓延するよりも速いから仕方ない。

そんな白坂くんは、その容姿からは想像もできないほどにドライな性格をしている。ついでに言うと、アイドルみたいな愛嬌はなく、指導係に指名されてから三か月、彼の笑顔は見たことがない。

私の〝ひどく振ったらしいね〟という言葉に、白坂くんは無表情のまま答える。

「言われるほどひどくはなかったですよ。普通です」
「そうなの?」
「早く帰りたいところを呼び止められた挙句、すぐ本題に入らずに面白くもない雑談をだらだら始めたんで、『時間の無駄なんで帰ります』って言っただけですけど」

「……なるほど。相手はなんて?」と聞きながら、白坂くんの隣のデスクの椅子を引く。

「話があるってしつこく言ってましたけど。『もう散々聞いたんで、これ以上は聞きたくありません』って返事して帰りました」

それはなかなかひどい気がする……。
そうは思いながらも、白坂くんの性格を知っているだけに、そんな言葉が出ちゃっても仕方ないのかな、と思っていると彼が続ける。

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