エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

「名前も知らないような人との雑談なんて無駄でしかないですし、それでも数分は付き合ったからもういいでしょ、と思って。そもそも、知らない人に好きだなんて言われたところで、オーケーするはずがないですし」

白坂くんの『名前も知らないような人』という言葉に、いつだったか芝浦も似たようなことを言っていたっけ、と思い出す。

外見がよくてモテる人は、思考も似てくるものなのだろうか。

そんな疑問を浮かべていると、向かいの席に座っている沼田さんが、開いた状態のノートパソコンの横から顔を出す。

社内の噂話には率先して参加する沼田さんは、私のひとつ下で、彼女も私が指導係をした。

つまり、本店営業部の平均年齢は若い。
女性社員で言えばなんと入社四年目の私が年長者だ。

まぁ、仕事ができる沼田さんのおかげでなんとか仕事も回っているけれど。

「へー。白坂くんは中身知ってからじゃないと付き合わないタイプなんだ」

黒髪ショートの沼田さんは一見クールに見えるのに、意外とミーハーで話好きだ。
今みたいに白坂くんと話していると沼田さんが割り込んでくるのはいつものことだった。

「そんな顔してたらレベル高い女の子だって寄ってくるでしょ」

お客様のいない店内に、そこそこ響く明るいハキハキとした声。
それでも、部長を含めた八人の社員は誰も沼田さんを注意しようとはしない。

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