エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「この部屋に俺しか訪ねてこないならそうも言うけど、別の男が来る可能性だってあるだろ。その時にしっかり自己防衛してもらわないと困るから」
さらっと言う様子に、ビタッと時間が止まる。
涼しそうにアイスコーヒーを飲む芝浦の横顔を見て、最近のそういう言動は一体、なにが目的なんだと問いただしたくなる。
ここ数か月、こんなのばっかだ。そのたび感じたもやもやは胸のなかに溜まり、もはや不快感と化していた。
他人から与えられる感情は、優しさでも嫌悪でも、理由がわからないと落ち着かない。
答えがわからないままなのがいよいよ気持ち悪くなり、いっそからかっているだけならそれでいいから……と、疑問をぶつけようとしたとき、芝浦がこちらを見た。
「郵便にしろ宅配便にしろ、そんな恰好では出るなよ」
そんなの私の自由だ。ただの同期に言われることじゃない。
けれど、真面目な顔を見れば、芝浦が心配してくれていることは伝わってくるから、変な意地は張らずにうなずく。
「わかってるから大丈夫」
「それならいいけど」
「……ありがとう」
私の答えに、わずかに安心したような微笑みを浮かべる口元。
胸の奥底がそわそわとくすぐったくて我慢できなくなり、今度こそ聞こうとしたけれど、芝浦が話し出す方が先だった。
「そういえば、月に一度来る男……小金井だっけ。今月も来たのか?」
二度の不発感にガックリしながら「ああ、うん」と答える。
芝浦とはふたりで食事したり飲んだりすることもあるから、小金井さんのことはその時に話している。
ふたりのときは、愚痴を聞いてもらうのがいつものパターンだ。一方の芝浦は愚痴ると言うよりは、〝こんなことがあった〟という報告に近い。
きっと私よりも仕事に対するストレスや不満は多いだろうに、ふたりきりでも同期会でも、さらっと事の表面しか話さないところは、すごいなと尊敬している。