エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「別に、お客様相手に平等に接しなくちゃなんていうポリシーがあるわけじゃないし、相手を見て対応を変えるべきだとは思うんだけどね。それができれば必要以上に疲れないですむってこともわかってる。でも……愛想笑いでやり過ごせるならそれでいいとは思ってるのかもしれない」
そう、力なく言ってからひとりゆるく首を振る。
「だけど、それじゃダメだよね。私はそれでよくても、次の担当者が困ることになる。私が毅然とした対応ができないせいで、他のひとがとばっちりを受けるなら、やっぱり私が間違ってるのかも」
汗をかき始めたコップに視線を留めながら「私は甘いのかな」とポツリとこぼすと、芝浦は「そんなことないだろ」と即答した。
「笑顔で接客することは接客業の基本だろ。それに、下手に冷たくして逆上されても困るし。内見の時、ふたりきりだってことを踏まえれば相手を刺激しないに越したことはない。桜井が落ち込む必要はないと思うけど」
「……うん」
「それに、上司の性格にもよるだろ。今の部長が……言い方は悪いけど、事なかれ主義なら桜井の仕事の仕方は間違ってない。上がハッキリなにも言わないなら、周りに何を言われようが下手に動かない方がいい」
ハッキリと言い切った芝浦が私を見て苦笑いを浮かべる。
「ただ、月に一度必ずそいつに時間が割かれるのは、結構ストレスだよな」
本当に私の心に寄り添ってくれているような表情と声だった。
芝浦が案外聞き上手で、しかも真面目に相談に乗ってくれるという部分は、ふたりで会うようになるまでは知らなかった一面だ。
きっと、部署内では優しくて頼りがいのある先輩だと慕われているんだろうな、と思いながら「そうかも」と答える。
エアコンの音と、隣人の立てる物音が聞こえる室内。アイスコーヒーに浮かんだ氷を眺めていると、不意に「この間は悪かった」と謝られる。
顔を上げると、芝浦がバツが悪そうな顔をしてこちらを見ていた。