独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
「大丈夫」

 これ以上の過剰なスキンシップは心臓によくないので遠慮したい。

 蓮斗は左手をポケットに入れて、横断歩道を渡り始めた。JR大阪駅前の混雑した通りを抜けて、道路沿いに進む。薄暗くなった空の下、目的のガラス張りの高層ビルはほんのりとライトアップされていた。

「今からなら夜景にちょうどいい時間だな」

 案内に従って、専用の入場口から展望台へと続くエレベーターに乗った。エレベーターはシースルーで、カップルや家族連れ、観光客の姿がある。

 三十五階からは空中エスカレーターに乗り換えて、四十階にある屋内展望フロアに向かった。そこでもじゅうぶん景色がキレイだったが、もう一階上がると、屋上回廊に到着した。その名前の通り、屋外にある幅二メートルほどの回廊から、三六〇度の絶景が楽しめる。

「ちょっと風が寒いけど、気持ちいいね」

 詩穂は髪を手で押さえながら蓮斗を見た。彼の少し長めの前髪も風に揺れている。すっかり暗くなった空に、キラキラ輝くビルの明かりや車のライトが映えていた。

「キレイだね~。あ、ソムニウムのビル、見えるかな?」

 詩穂は手すりにもたれて南東の方角を見たが、暗いうえに高層ビルやホテルに阻まれていてよくわからない。
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