俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
こんなお願いをされるだなんて、いったいどうして予想出来ようか。

当然だけれど私は写真のモデルなんてやったことはない。ましてやコンプレックスだらけの体を撮ってもらって人に見せるだなんて、出来るわけがない。

「ご、ごめんなさい。無理です。モデルなんてやったことないし、そもそも……私なんてモデルになれるような顔でも体でもないです。ごめんなさい」

申し訳ないけれどとても力になれそうにないと思い、素直にお断りする。

すると小宮山さんは「そんなことない!」と、彼らしくないほど熱のこもった口調で返した。

「梓希さんはすごく綺麗だ。女性的な魅力を内包しながら少女のような透き通った輝きも持っている。その表情も、雰囲気も、あなたを形どっている顔も体も、すごくすごく素敵だ。僕の世界に在ってほしい女性はあなたしかいない」

カメラマンが被写体のテンションを上げるため、わりと情熱的な言葉を口にすることは知っている。けれどそれがいざ自分に向けられるとなると、どうしようもない恥ずかしさとこそばゆさと、けれどもうっとりするような喜びに襲われ、私は頭が沸騰しそうになった。

「そ、そ、そんなことないです、それは小宮山さんの錯覚です……私本当にただのおデブで、写真に撮られる価値とかありませんから」

「そんなふうに思うのは、梓希さんが自分の美しさに気づいてないからだよ。僕ならあなたを目覚めさせてあげられる。僕のファインダーを通してあなたはさなぎから蝶へと生まれ変わるんだ」

「私もそう思います。椛田さんは同性の私から見ても魅力的です。先生の写真ならばきっとその魅力を最大に開花させると思います。私も先生が撮った椛田さんが見たいです」

由良さんまで参戦してきて、私はますます惑乱する。

顔を赤くさせながら「でも、でも……」と戸惑っていると、ハッとした様子で小宮山さんが前のめりになっていた姿勢を戻した。
 
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