俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「ただいまー。梓希、帰ってるのか?」
周防さんが帰ってきたのは、それから一時間後のことだった。
誤爆したことに気がついたのか、メッセージはあれからすぐに送信取り消しされた。謝罪や言い訳が送られてこなかったところを見ると、なかったことにしてシラをきるつもりだろうか。
「なんだ、いるなら返事しろよ。晩飯まだだろ? 何か食べにいくか」
私の部屋としてあてがわれている書斎のドアを開き、周防さんは部屋の隅で座り込んでいる私の背に呼びかける。
ご飯を食べにいくどころか彼の顔を見るのも今は抵抗があるけれど、怒ってだんまりなのはかわいくないと思い、渋々と振り向いた。
「……なんだ? 調子でも悪いのか?」
そう言って周防さんは部屋に入ってくると、私の前まで歩を進める。
そのとき、ふわりとお風呂上がりのような香りが鼻をかすめて、私はうっかり泣き出しそうな顔になってしまった。
「どうした、すごい顔して。また風邪でもひいたのか」
おでこにあてられそうになった手を避けるように顔を俯かせると、「梓希?」と不思議そうな声が頭の上から聞こえた。
「ど……どこ行ってたんですか」
まだ浮気って決まったわけじゃない。確定するまでは責めたり泣いたりしちゃいけないと自分に言い聞かせ、全身全霊で冷静を装う。