俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
グラスのお水をひと口飲んで冷静さを取り戻してから、私は改めて口を開いた。
「……ど、どうして? だって和花ちゃんすごくお仕事がんばってたし、最近ではプレゼンも順調だったし……あ、もしかして他からヘッドハンディングあったとか?」
彼女にこの業種やうちの会社が嫌だという様子がこれっぽっちも見えなかったこともあって、疑問が頭の中を埋め尽くしてしまう。
すると和花ちゃんはもう一度「驚かないでね」と念を押し口もとに人差し指をあててから、潜めた声で言った。
「あのね、お付き合いしてる人と結婚することになって……彼の仕事を手伝うことにしたの」
「えぇぇえっ!!」
さすがに今度の告白には驚きを抑えきれなかった。だって! それって! 寿退社ってことじゃん!
最近の和花ちゃんは何もかもが順調だと思っていたけれど、まさかついに恋と仕事の順調の頂点を極めるだなんて。すごい。すごすぎる。
「おめでとう和花ちゃん~っ! すごいよお、私も嬉しいよお、幸せになってね!」
同期で入社して一緒に新人時代を乗り切ってきた戦友が大きな幸せを掴んだことが、我がことのように嬉しい。感動で涙腺まで緩んでくる。
「ありがとう、梓希」
「それで、お相手の人ってどんな人なの? お仕事を手伝うって?」
――けれど。最後にはにかみながら言った和花ちゃんの激白は、寿退社の驚きをも吹き飛ばすほど衝撃だった。
「……東條さんなの。彼、今年中に独立して自分のデザイン事務所持つから、私が経営の方をサポートしようと思って」