俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「……と……?」
あまりに予想外すぎて、私は一瞬『東條さん』が誰のことだか分からなくなる。
けれどその数秒後、それが我がクリエイティブ部のエースでCDの東條椿樹さんだと気づき、「え? え? えぇえっ!? えええええええええ!! ええええええ!?」と盛大に驚きの声をあげてしまった。
「梓希、静かに!」と和花ちゃんがシーっと人差し指を口にあてたとき。
「オマタセシマシター。シーフードカレーと豆カレーデス」
インド人の店員さんがカレーを運んできて、私は頭が混乱したままヘラリと笑って「あ、どうも、ごちそうさまです」とわけの分からないことを口走ってしまった。
店員さんは「ナンオカワリOKヨー。ゴユックリー」とニコニコしながら去っていき、私は温かいナンをちぎりながら、驚きでまだ見開いたままの目を和花ちゃんに向けた。
「東條さんって……あの東條さんだよね? わ、和花ちゃんの彼氏って……東條さんだったんだぁ……。全然気がつかなかった……」
まさか同じ部署に和花ちゃんの彼氏がいただなんて。まったくこれっぽっちも気づかなかった私は、もしかして鈍感なのだろうか。
「一年とちょっと前くらいかな、東條さんが私事で困ってたときに私がお手伝いしたのがきっかけで仲良くなって、それからお付き合いが始まって。それで……去年の秋ごろにプロポーズと独立の相談をされて。東條さんってデザインの方は超一流だけど、コミュニケーションは不器用っていうか、営業とかはてんで駄目でしょ? だからそっち方面は私が支えてあげられたらなあって思って」
少し照れながら話す和花ちゃんはものすごく綺麗に見えて、私は思わず彼女に見入ってしまう。
すごい。これが幸せの絶頂にいる人のキラキラオーラか。まばゆすぎる。