俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「それとね、私も東條さんも早く子供が欲しくて。お互い仕事も育児も満喫したいねってわがまま言ってて。だから事務所兼自宅にしてベビーシッターさんに来てもらおうってことにしたの。そうすれば私も東條さんも仕事の合間に子供と過ごせるでしょ」
「へえ~~」
眩しすぎる未来を語る和花ちゃんに、私はただひたすら感心をした。ただ幸せなだけじゃなく、ふたりで子供が生まれてからの未来設計までしていただなんて。
「今日の業務後に部長に退職の旨を伝えるつもりだったんだけど、その前に一番に梓希に報告したくて。驚かせちゃってごめんね」
「ううん! 全然! っていうか、そんな大切なこと一番に教えてくれて嬉しいよ。ありがとう」
和花ちゃんの友情にまたしても胸が熱くなる。私はラッシーを追加オーダーすると、「後でお祝いしようね。とりあえず、乾杯」と言って、和花ちゃんとグラスを合わせた。
「それにしてもすごいよねぇ……和花ちゃんも東條さんもお仕事絶好調のふたりが寿退社で独立だもんね。会社どころか業界中がザワッとしそう」
つくづくと言えば、和花ちゃんは眉尻を下げて笑いながら「東條さんはともかく、私はすごくもなんともないよ」とナンをモグモグと食べた。
「そういえば今年のS区の夏祭りポスター、東條さんがデザインやるんだよね。それが終わってから退社ってことになるの?」
「うん。納品が六月だから、それがしののめ広告での最後の仕事だって」
「そっかあ。最後に大きな功績を残していってくれるなんて、会社としてはありがたいよね」
「東條さん的にも結構大きい案件みたい。ほら、今年の夏って『ルパルク』の広告もうちで手掛けることになったでしょ。ビッグプロジェクト両方合わせて三億超えるらしいよ」