俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「さっ……三億!?」

どちらも大きな案件だとは思っていたけれど、具体的に数字に出されると目を剥いてしまう。

クリエイティブ部トップの東條さんと、営業部エースの周防さん。さすがうちの二本柱だ。このふたりがいたから、うちの会社は大手広告代理店にもまったく引けを取らなかったのだ。

「すごいよねー。会社も相当気合い入れてるみたいで、局長とかともミーティングに出てくるらしいよ。そういえば『ルパルク』は周防さんの案件なんだっけ。なんか聞いてる?」

なにげなく和花ちゃんが聞いたその質問に、私はハッとさせられる。

……そういえば私、周防さんから何も聞いてない。別に仕事のこと常に報告し合っているわけじゃないけど、でも……こんな大きなプロジェクト手掛けてるなら、言ってくれたって不思議はないのに。

「聞いてない……なんにも」

『ルパルク』の案件に璃々がかかわっていることを思い出し、途端に胸がモヤモヤする。

もしかして、まさか、璃々がかかわっているから私にその話はしないのだろうか。

「そうなんだ。まあ、周防さんのことだからプレッシャー感じてるところを梓希に知られたくないのかもね。周防さんプライド高そうだし」

「はは、は。そうかも」

力なく笑って答えながら、私は最後のお楽しみにとっておいたはずの海老を口に頬張る。

(海老おいしい。幸せ)

頭の中を無理やり幸せで埋めようとしたけれど、結局胸のモヤモヤはそのままずっと残り続けてしまった。
 
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