俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「は!? 嘘だろ!?」
そんな大声と共にいきなりドアがバン!と開かれ、ドアに張りついていた私は「うわぁあ」と間抜けな声と共に吹っ飛んで尻もちをつく。
周防さんはよっぽど慌てていたのか、そんな私に気がつかないまま廊下を駆けて玄関から飛び出していってしまった。
「な……何事?」
尋常じゃない様子の彼が気になって、私も後を追うことにした。
玄関を出てから自分がパジャマ姿だったことに気がついたので、とりあえず持ったままだったコートを羽織ることにする。
どうやら周防さんは一階のエントランスへ行ったようだ。エレベーターが戻ってくるのが待ちきれず、私は階段で下まで駆け降りる。
五階からとはいえダッシュは無茶だったと思いながらゼエゼエと息を切らせて一階まで辿り着いたとき、ひとけのない静かな共用エントランスの隅に周防さんの姿を見つけた。
彼はモッズコートのフードを目深にかぶった人物と話をしている。モッズコートにデニムという格好なのではっきりとはわからないけれど、小柄な体格と話し声の高さから女性だということが窺えた。
「お前……家まで押しかけてくるとかありえないだろ? マスコミに見つかったらどうすんだよ」
「朝までいてくれるって言ったのに、私が寝てる間に遥が勝手に帰っちゃうからでしょ!」
「でかい声出すなって。っつか五時は十分朝だろ、俺だって長谷川さんだって仕事があるんだよ」
「じゃあ私も遥と一緒に住む! 私をひとりにしないで!」
「めちゃくちゃなこと言うなよ! ったく……」