俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
あきらかに男女の修羅場なその場面を目撃して、私は愕然と立ち尽くす。
え? 何これ? 周防さん飲み会じゃなく、朝までこの女の人と一緒だったってこと? え? それって……もう疑う余地もなく浮気ってことだよね?
もはや頭の中が真っ白になって動けないでいると、私が立っていたことに気づいた女性が「何見てんのよ!」とこちらに向かって叫んだ。
そのせいで私の存在に気づいた周防さんが、『うわっ』と言わんばかりの表情を浮かべる。
「梓希、お前なんで……」
こちらに向かってやって来た周防さんは私が放心している様子を見て眉根を寄せると、「後で説明する。とりあえず部屋へ戻ってろ」と肩を押してエレベーターへ向かわせようとした。
ところがそんな彼の肩を、駆けてきた女性が掴んで引き止める。
「待って! この女なの? 遥と住んでる女って!」
「そうだけどこいつは関係ねえよ、絡むな」
そう言って周防さんが女性の手を離させようとした勢いで、女性のかぶっていたフードが脱げた。長い髪と顔があらわになって、私は驚きと(やっぱり)という気持ちに襲われる。
目の前に現れたお人形のように綺麗な顔は、テレビで何度も見たことのある大人気シンガー・璃々だった。
(顔ちっさ! 肌白っ! 睫毛長っ! 目でかっ! 唇綺麗……っ!)
ド修羅場の真っ最中だというのに、私は初めて生で見る璃々の美しさにミーハー丸出しの感動をしてしまう。やっぱり芸能人ってすごい。私と同じホモサピエンスだとは思えない。