俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
けれどそのきらめくような容姿とは裏腹に、璃々の口からはなかなか辛辣な言葉が飛び出す。
「ブスじゃん! なんでこんなのと付き合ってんの? しかもデブだよ? 遊びにしてもありえなくない?」
今まで生きてきた中で一番ストレートでダメージの大きな悪口だったと思う。まさか社会人になってまでこんな稚拙でストレートな悪口を、しかも芸能人に言われるなんて夢にも思わなかった。
あまりの衝撃でうっかり涙目になってしまっていると、周防さんが自分の懐に私を強く抱き寄せ、初めて聞く威圧的で低い声で言った。
「璃々。俺、お前のそういうところが本当に嫌いだ。帰れ」
さすがに璃々も神妙な顔になり、フードをかぶり直すと「ムカつく」と小さく呟いて口を噤んだ。
「梓希。すぐ戻るからお前は先に部屋へ帰ってろ」
周防さんはそう言うと私だけをエレベーターに載せて、ボタンを押した。
ドアが閉まるまで彼は私を見つめていたけれど、その姿が涙でだんだん滲んでいく。
ドアが閉まりエレベーターが動き出すと同時に、私は情けなく声をあげて泣いた。
周防さんが浮気していたことも、璃々が復縁したがっていたことも、目の当たりにしてしまった。もう『何かの間違いかも』『考えすぎかも』なんて自分を慰めることも出来ない。
「馬鹿ぁ~周防さんも璃々も馬鹿馬鹿ぁ~~ついでに惚れ薬の大馬鹿ぁあ~~」
惚れ薬のくせに浮気が出来てしまうだなんて、なんて役立たずな惚れ薬なのだとお門違いの八つ当たりまでしたくなる。
そういえばエレベーターには監視カメラがついていたなとふと思い出したけれど、今さら号泣を止めることもできず、私は五階に着くまでわんわんと泣き声をあげた。