俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
それから周防さんが部屋に帰ってきたのは、十五分後のことだった。
急いで服を着替え、とりあえず必要なものを大型バッグに詰め込んでここを出ようとしていた私と玄関で鉢合わせ、周防さんは目を丸くしている。
「なんだよ、その大荷物。ってか、まだ七時前だぞ。出勤には早すぎね?」
「か……、帰ります。自分のアパートに。今までお世話になりました」
やっぱりアパートの解約をすぐしなくてよかったと思う。あやうく帰る場所がなくなるところだった。
グズグズと鼻を啜り上げながら言った私に、周防さんは「いやいやいや、待て。ちょっと待て」と言うと、手からバッグを取り上げる。
「話聞けって。勘違いするのも無理ないけど、俺は浮気とかしてないから」
「でも璃々さんとゆうべずっと一緒だったんですよね? 璃々さん元カノなんでしょう?
璃々さんは今でも周防さんのこと好きで、『ルパルク』のモデルを引き受けたのも周防さんとヨリが戻ったからだって、噂で聞きました」
「だから戻ってねえよ。分かるだろ? 俺はお前の親の前で結婚まで宣言したんだぞ。俺が好きなのはお前だけだって何べん言えば分かるんだよ」
周防さんはきっぱりと言うけれど、その気持ちが私にとっては悲しい。