俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
彼の手から静かにバッグを取り返すと、私はポロポロと涙を零れさせながらもジッと視線を合わせて言った。
「もういいんです。今までごめんなさい、周防さんの気持ちを縛っちゃって。周防さんが私のことを好きなのは全部間違いなんです。だから私たち、本当は一緒にいるべきじゃないんです。ごめんなさい……必ず私がもとの周防さんに戻してみせますから、もう少しだけ待ってください」
「梓希……?」
なんのことを言っているのだろうというような怪訝そうな表情で、周防さんが私を見る。
このままずっと彼に見つめられていたいという未練を振り切り、深々と頭を下げて告げた。
「さようなら」
どこかで終止符を打たなくちゃいけなかった。間違いの恋は、今日ここで終わり。
ふたりの関係が深くならないうちに、私は距離を置くべきだったんだ。
玄関のドアを開けると、冬の朝の空気が肌を刺した。零れてくる涙を拭い、私は心に思う。
――さようなら、周防さん。けれど願わくば。薬が解けたそのときにもう一度、あなたの恋人になれますように。と。