俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
その日の昼休み。
私はリフレッシュスペースのテーブルで昼食をとりながらスマートフォンを眺め、「ううーん」と悩んでいた。
「探偵たっか……人探しで三十万プラス成功報酬って……うわ、日にちが掛かればさらに値段上がるのか」
眺めているのは探偵事務所の料金表。SNSだけではシャーマン美鈴を捜すのに限界を感じ探偵に依頼しようと思ったのだけれど、想像以上に高い料金におののいている。
「でもこれ以上長引かせるわけにもいかないもんね。金銭的にかなりつらいけど、やるしかない……!」
今朝のことを思い出し、苦渋の決断をする。貯金通帳の残高が頭によぎったけれど、背に腹は代えられない。
一刻も早く惚れ薬を解かなければ、周防さんも私も……璃々さんも、誰も幸せになれないのだ。
薬の効果を解いたとき、周防さんが誰を選ぶかは分からない。璃々かもしれない、他の誰かかもしれない。もしかしたら、私かもしれない。
けれどどちらにしろ彼の本当の意志で選ばなくては意味がない。私はこれ以上周防さんと意味のない恋も傷つけ合いもしたくない。
だから三十万円が犠牲になっても仕方がないのだと自分に言い聞かせ、震える指で探偵事務所サイトに表示されている電話番号をタップしようとしていると、テーブルの前に人影が立ち「梓希さん」と声をかけられた。
「あ、小宮山さん」
「あけましておめでとう。今年もよろしくね」
顔を上げた先にいたのは、今日もお日様のような笑顔の小宮山さんだった。