俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
惚れ薬なんてまともに信じてもらえなさそうな話をうっかり真面目に相談してしまったのは、きっと冷静さを欠いていたからだ。

今朝のこともあって私の心は疲労困憊だったし、とどめにシャーマン美鈴の逮捕で、もはや藁にも縋る気持ちだったのだと思う。

「実は……」と、シャーマン美鈴から惚れ薬を買ったことから始まり、それをうっかり周防さんに飲ませ今に至るまでの話を、私は赤裸々に滾々と小宮山さんに語った。

こんな馬鹿げた話を、小宮山さんは最後まで真剣に聞いてくれた。そして「んー……」と考え込む素振りを見せると、「それっておかしくない?」と少し前のめりになって私に尋ねた。

「お、おかしいのは重々承知です。私だっていまだに信じられません、惚れ薬なんてものが本当に効いたなんて。でも薬が効いたからこそ周防さんの態度が激変したし、それに拒むと命だって――」

「そこ。それ。梓希さんが周防さんを拒むと死んじゃうんでしょ? でも周防さん、今日も生きてるよね?」

「え?」

「梓希さんが家を飛び出してきちゃったことは、周防さんにとって拒まれたことにはならないの?」

……あれ? 確かに?

今朝は璃々さんのことがあっていっぱいいっぱいだったせいで、そこまで頭が回っていなかった。けど、周防さんの心臓が止まるどころか苦しんでいる様子もなかったことに今さら気づく。
 
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