俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「……周防さんの愛を拒んだんじゃなく、私が周防さんのためを思ってしたことだから影響なかったとか……?」

「それもおかしいよね? だって影響が出るか否かは神様的な視点じゃなく、周防さんがどう感じるかが基準なんでしょ? 惚れ薬のことを知らない周防さんは、梓希さんが自分のために距離をとったなんて分かってないはずだ。彼からしてみたら元カノとのことを疑って梓希さんが怒って出ていったとしか感じていないはずだよ。それなのに彼の心臓はまだ動いている」

小宮山さんの分析を聞きながら、私は唖然としていた。それってつまり……。

「惚れ薬の効き目が切れてる……?」

信じられない思いで口にすれば、小宮山さんは腕を組んで再び「うーん」と悩んでから「違うと思うよ」と顔を上げた。

「薬が切れたんじゃない。もともと薬は効いていなかったんだ。惚れ薬なんてものはやっぱり存在しなかったんだよ」

あまりに衝撃的なその結論に、私は言葉も出せず口をパクパクさせる。

だって、そんな馬鹿な。じゃあ周防さんのあの溺愛は何? 態度が激変したことは? 私が彼の誘いや同棲を拒もうとしたとき、胸が苦しそうだったのは?

声にはならなかったけれど、私の言いたいことを小宮山さんは察したのだろう。

「周防さんの態度はすべて演技だったんじゃないかな。惚れ薬の効能をある程度知ってたら、それらしく振舞うことは全然難しいことじゃないよね」
 
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